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ボストン歳事記

春を告げる・メープルシュガリング


ニューイングランド地方の特産品としてもお馴染みのメープルシロップは、毎年2月中旬から4月の中旬頃にかけて収穫が行われます。朝晩は冷え込みがきつくても日中の気温がある程度上がり、温度の高低差が華氏で20度以上になるといよいよ収穫の時期。サップと呼ばれる樹液が1日の温度差によって上下する性質を利用して、シュガーメープルの木の幹に穴を開けてサップを採取します。サップには平均2%の糖分しか含まれていないので、透明で甘味もほとんどありません。限りなく水に近い感じ。

メープルシロップは収穫したサップを煮詰めて作ります。もともとは2%の糖分しかないサップを66%の糖分になるまで、時間をかけて煮詰めます。これ以上糖度が薄いとカビが生える可能性があり、濃すぎると白く固まってしまうそうで、66%という濃度は完璧なメープルシロップを作る魔法の数字。1ガロンのメープルシロップを作るのに、何と40ガロンものサップが必要だそうです。

サップが採取できるのは1年でもわずか6-8週間。しかも暖かいとサップは黄色に、風が強いとにおいがきつくなってしまったりと、上質のサップが採取できるかどうかはその時の自然環境にも左右されるそうです。2007年は1月まで暖冬で、その後急に寒くなってしまったので、メープルシュガリングには今1つだったそうです。

昔はシュガーメープルの木からサップを採取するには、写真のように穴を開けた木にバケツを下げて行いました。サップを収穫するためには樹齢40年以上、木の幹の幅が最低12インチ(約30センチ)ないとだめだそうです。幅が12インチだとバケツは1個だけ、18インチならば2個、24インチならば3個と決められているそうです。毎年おいしいサップを収穫するための決まりごとですが、この条件に当てはまれば自分の家の庭でもサップを収穫することは可能だそうです 。

このメープルシュガリングはマサチューセッツ州、バーモント州の多くのファームで見学することができます。詳しくはwww.massmaple.org/へどうぞ。ちなみに私が行ったファームはwww.thewarrenfarm.comです。


3月9日 バカ騒ぎのあとは・アッシュウエンズデイ


レントの第1日目にあたる日。レントとはイースター前日までの日曜日を除く40日間のことで、2月4日から3月10日の間のいずれかの日になります。キリストがヨハネから洗礼を受けた後、荒野で40日間断食したことを人々の記憶に残すようにとキリスト教徒は断食や贖罪などを行います。カソリック教会では、清めたシュロの葉を燃やした灰で牧師が信者の額に従事の印をつける儀式が行われます。レントの間はカソリック教徒の断食期となり、信者は質素な食事と祈りでこの期間を過ごすのです。最近では、むかしほどきびしくはなくなったようですが、この期間に何か大事なものをがまんすることも多いようです。

宗教によってもその厳しさが異なるのでしょうが、このレントの時期にロシア正教の友だちとランチを食べに行った時に困ったことがあります。パンとサラダしか食べることができない上に、パンやサラダの材料に動物的なものが含まれていては絶対にダメと主張されました。彼女の言うことも解るけれど、レストランでメニューの1つ1つの材料を質問した時には何もそこまでしなくても・・・と思ってしまったのでした。

このレントの期間が長くて苦しいので、カソリックの人々はその前に飲めや踊れや(笑)のバカ騒ぎをします。この中でも最も有名なのがリオのカーニバル。アメリカでもニューオリンズでマルディ=グラというお祭りが知られています。イタリアのベネチアでもカルナバーレというお祭りがありますね。どちらも1度は行ってみたいと思っているのですが、今だに実現していません。ニューオリンズにも北イタリア・ボローニャにも友だちが住んでいるのに。


時計を直さなくちゃ・3月13日 夏時間の始まり


2006年までは、アメリカでは4月の第1日曜日の午前2時から10月の最終日曜日までが夏時間(Daylight Saving Time)という規則でしたが、2007年から規則が変わりました。夏時間は3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までと、例年よりも1ヶ月ほど長くなりました。これは少しでも多く太陽の光を利用して、電気などのエネルギーを節約するため。時間は夜中の2時に時間が変わるので、日曜日の朝に起きるともう時間が変わっています。土曜日の夜に寝る前に時計の針を1時間先に進めておくと楽です。

夏時間の必要性を最初に提唱したのは、あのベンジャミン=フランクリンだそうです。1784年に書かれた彼のエッセイの中に夏時間に関する文章が見られます。その後、第1次大戦・第2次大戦中は燃料を節約する目的で、一部で夏時間が実施されたこともあるそうですが、アメリカで実際に法律によって決められたのはThe Uniform Time Actが施行された1966年のことです。ただし、ハワイ、アリゾナなどでは夏時間は実施されていません。夏時間の間は、日本との時差は13時間になります。夏時間が来ると、いよいよボストンにも春が来た!という気分になります。


緑の物を身につけなきゃ・3月17日・セイントパトリックスデイ


3月17日は聖・パトリックスデイです。日本ではあまりおなじみではないかもしれませんが、実はアイルランドの人々にとっての最大の祝日なのです。この日の起源は5世紀まで遡ることができます。アイルランドの守護聖人と言われているセイントパトリックは432年にアイルランドに伝道に赴いてキリスト教を広めました。それまでアイルランドはケルト人が古くから信じるドルイド教が主流でした。彼はシャムロック(シロツメ草)が1つの茎から3つの葉がでていることを使って、三位一体を説明しました。三位一体とはキリスト教の根本教義の1つで、神は唯一であると同時に、父と子と精霊の3つの位格をもつということです。今ではシャムロックは聖パトリックデイには忘れることのできないシンボルであり、アイルランドの国花でもあります。


彼は461年3月17日に亡くなるまでの一生をアイルランドでの宣教に捧げました。多くの人々に洗礼を施しただけでなく、400近くもの修道院や神学校を設立し、現在のアイルランドの宗教的基盤を築いたのでした。聖パトリックスデイは彼の追悼日に当たります。アメリカではアイルランド系の住民の多い東海岸で盛大に祝われる傾向があります。実際、アメリカで一番最初に聖パトリッックスデイがお祝いされたのは、ここボストンだと言われています。1737年3月17日にチャリタブル・アイリッシュ・オブ・ボストンというグループがお祝いしたのが最初なのだそうです。どちらかというとアメリカでは宗教的な祭日というよりも、緑色の物を身につけてお祭りのように楽しく過ごすのが一般的なようです。パレードが行われたり、町のあちこちでアイリッシュダンスが行われたり、バーではグリーンビールが売られたりと大騒ぎな1日となります。是非、3月17日は緑色の洋服を身につけて町にでかけましょう。何か楽しい出合いがあるかもしれません。ボストン近郊での大きいパレードはサウスボストン、ウースターなどで行われます。


ボストンでは3月といっても、まだ寒い日が続きます。でもここまで来たら春はもうすぐそこ。たくさんの花が咲き、緑に包まれる「春」はボストンでも一番美しい季節です。